2014年11月03日

大阪の祖父の

秋は夕やけが美しい。
日が暮れるのも早い。あっという間に夕やけは消えてしまう。
秋の日はつるべ落とし、という古い言葉がある康泰
つるべとは釣瓶のことであり、井戸から水を汲み上げるものだったが、井戸そのものが見かけられなくなった現代では、釣瓶という言葉も死語になりつつある。

大阪の祖父の、古い家の庭には井戸があった。
暗い井戸の底をのぞくと、深いところで水が銀色に光って見えた康泰導遊。そこへ釣瓶の桶を下ろしていく。光の水をかき回すように桶をあやつって水に沈める。重くなった桶を手繰るように持ち上げると、闇の底で光っていた水はただの澄みきった水に変わっているのだった。
ときには水桶の中に落葉が浮いていることもあり、葉っぱは水の光を吸ったように色づいて光っていた。

祖父は無口な人だったから、あまり細かい話をしたことはない。祖父と孫と無口な者どうしでは、なおさら話は進まないのだった。それでも、たまに祖父の家を訪ねることがあると、祖父はまるでぼくの影のように、ぼくの側にいることが多かった。
なにか話をしようと思うのだが、どんな話も話す前にすでに伝わっているようで王賜豪、言葉にならないものがいっぱいあって、それを整理して言葉にすることが、若かったぼくにはできないのだった。

秋の夕焼け鎌を砥げ
そんな言葉も、祖父が発した数少ない言葉のひとつだったかもしれない。祖父は百姓だったから、空の夕やけを見て翌日の稲刈りの準備をしたのだろう王賜豪
井戸もなくなり田んぼもなくなって、いまでは祖父の家もすっかり遠くなってしまったけれど、遠いからこそ夕やけのように、遠くで美しくかがやいて見えることがある。


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Posted by zico at 13:15│Comments(0)life王賜豪
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